
住宅ローンは文字通り、住宅を取得するために組むローンです。住宅用地や建物を担保とし、住宅建設に必要な資金を借ります。ローンの借入上限は借りる人の年収などで決まります。借入額が希望に達しないときは、複数人が債務者となってお金を借りる連帯債務という方法がとれます。その内容やメリット・デメリットについて詳しく解説します。
住宅ローンの連帯債務制度の特徴とは?
連帯債務制度は他のローンの組み方と何が違うのでしょうか。意味やなれる人の条件などについて解説します。
銀行が設定する借入限度額
住宅ローンの借入限度額は、個人によって大きく異なります。借り入れる人の年収や年齢、担保となる物件の価値、借入希望者のこれまでの信用情報などさまざまな面から審査されます。銀行がどのくらいまでなら貸せるかを判断したうえで、その人の借入限度額が示されます。
連帯債務とは
金融機関から提示された金額が、物件を購入する際に足りていればよいのですが、不足していたらどうすればいいのでしょうか。その対策の一つが連帯債務です。
1つの借入を複数人で返済する方式で、住宅ローンを借りるときに、自分の収入以外に別の人の収入も合算し、住宅ローンの借入限度額上限を引き上げます。収入合算の条件は金融機関によってことなりますが、一人で借りるよりも上限を増やせます。
このとき、一人がメインの借入者、それ以外の人が連帯債務者となり、支払いの義務を負います。夫婦であれば夫と妻が、親子であれば親と子が一つのローンの支払いに責任を持ちます。
連帯債務者になれる人
代表的な住宅ローンであるフラット35を例にとり、なれる人の範囲を整理します。収入合算できるのは、以下の要件に全て当てはまる人です。
・申込みご本人の親、子、配偶者等
・申込時の年齢が70歳未満の方
・申込みご本人と同居される方
・連帯債務者となる方(1名のみとなります。)
収入合算できるのは、収入合算者の年収の全額までです。80から収入を合算した人のうち年齢が高い人の申込時の年齢を引いて求めた数字が、借入期間の上限となります。
55歳と45歳の2人で連帯債務を行えば、80から年齢が高い人の55を引いて、25となります。したがって、借入期間の上限は25年となるわけです。
住宅ローンのペアローンとの違い
似た方式にペアローンがあります。両者には、どのような違いがあるのでしょうか。ペアローンの概要と、ペアローンを組める人について解説します。
ペアローンとは
ペアローンは1つの物件に対し、2人が別々にローンを組む方式です。2人の収入を合わせて借入金額を計算するわけではないため、それぞれが「主たる債務者」として返済の責任を負います。
別々にローンを組むといっても互いに相手の連帯保証人となるため、相手が返済できなくなったときに、自分が代わりに支払う責任を持っています。ローンを別々に組んでいるため、住宅ローン控除をフルで使えるというメリットがあり、所得税や住民税を効果的に減らせます。
ただし、別々に組んでいるため手続きの手間が増すというデメリットがあります。
ペアローンを組める人
ペアローンを組める条件は金融機関によって異なりますが、夫婦や親子といった関係性があれば、認められる可能性が高まります。
一定の収入と返済能力を持っていることが大前提のローンですので、専業主婦(夫)で一定の収入と独立した返済能力を有していないのであれば認められる確率が低くなります。
住宅ローンを連帯債務にするメリットとデメリット
連帯債務とは、複数の人が共同して借り入れを行い、返済責任を共有する形態です。住宅ローンを連帯債務にする場合、共同して借り入れを行うことで、いくつかのメリットやデメリットが存在します。
連帯債務のメリット
1つ目は借入限度額を増やせることです。一人で借りるよりも、夫婦・親子の収入を合あわせて計算して信用力を増し、借入限度額を増やせます。2つ目は住宅ローン控除を全員が受けられることです。
3つ目は諸費用を抑えられることです。ペアローンのように別々で借り入れてしまうと、事務手数料などの諸経費が2倍かかってしまいます。連帯債務なら契約が一つですので諸費用を節約できます。
連帯債務のデメリット
1つ目はケガや病気など、何らかの理由でどちらかの収入が減ってしまっても、債務が減免されないことです。収入が減っても返済は減らないのです。2つ目は離婚しても返済義務がなくならないことです。別居してその家に住まなくなったとしても、返済義務は継続します。
3つ目は、主債務者しか団体信用生命保険に入れない可能性があることです。団体信用生命保険は、万が一の事故や病気で債務者が亡くなったり、重度障がい者になった時に残債の全額が保険によって支払われる仕組みです。主債務者以外はこれを利用できないというデメリットがあるのです。
まとめ
今回は連帯債務についてまとめました。夫婦・親子などの収入を合算で計算して借入する方法には、一人よりも大きな金額で借りられるというメリットがあります。住宅ローン控除の面で見ても、メリットがある仕組みです。
しかし、収入が減っても返済額は減免されず、離婚によって債務が消滅することもありません。連帯債務を利用するときは、長期的な支払い能力を考慮しなければなりません。